ゆるぴたブログ

どうってことない、再生とか。希望とか。

ななつぼし


ななつぼし

みたことがないふしぎなひかりのつきをみたの


ねえ

おかあさま、わたしは
納屋で素早く走る
まるで灯籠のように
ぐるぐるまわる、
怪しき人影を見たのでございます…




昏いね、
まあ、こんなに。
あせをかいてしまって…


幸代さん

すぐに、
体を拭いておやりなさい、
新しい寝巻きにかえてあげて頂戴。


昏いのね…


可哀想に…


いいえ。

お母様。

私の瞳にはお母様も

お部屋の灯りも見えております…


いいのよ昏いのね、


もう、
おやすみなさい、


さあ、
幸代、

この子のからだをふいたら、
新しい寝巻きにかえて
寝室に連れて行ってあげて頂戴。



わたしは。

夜半に、目が醒めた

こつりこつりと時計の音がくるしくなる

そうっと、立ち上がり…


素足で
井戸にむかう、

音はたてられないゆえ、

そばにある柄杓の残りしみずにて
唇、ひび割れた、潤す
たまらなくなり、
のみほす、
たまらなくなり、
からだに

からだからだ

あたしのからだに、


たらたらと
いすいながれ、

わたし?
あたし。、

わたしわたし、
あたしは、

へんなかたちのつきをおおぎみる、
お母様もいない、幸代もいない

あたしと

月と

あたしと

汚れたみずだけだ、

いっそ、
せいせいしたこころもちとなり、


わたくしは


いすい、

田畑にうつる月影を

ぼんやりみつめながら、

あつくたかぶるぶぶんに

いすいふりかけ、

そっとこする。


月とわたくしだけ、


くちびるをかみしめ、

わたしは、

どうしてよいか、
わからないきもちになってしまった、


素足まま、
寝室に戻る


コオロギひとつ、

わたしの寝具に紛れ込む、

あんまり
うるさいゆえ


指ではじいて


わたしは、

こおろぎを。